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NHKニュースウォッチ9の佐藤愛子「九十歳。何がめでたい」に違和感

2017/05/13

九十歳。何がめでたい


 今朝、Amazonの本の売れ筋ランキングを偶然見たら、佐藤愛子さんの「九十歳。何がめでたい」が1位になっていて驚いた。

 この本は、書店で新刊本として平積みされていた時に手にとって、2、3ページ読んだだけで笑いがこみ上げ、すぐに買うことを決めた。


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 本は昨年からジワジワと話題になっていたけど、どうやら昨夜のNHKの「ニュース ウォッチ 9」で特集があったようで、それで改めて注目が集まっているらしい。

 佐藤愛子先生の本と、私の付き合いは長い。
 かれこれ40年近く前だろうか、母の書棚にあった佐藤愛子のエッセイをこっそり読んだ。「娘と私」のなんとか・・・・というタイトルだっと思う。

 佐藤愛子の「娘と私」シリーズはいくつもあって、母の書棚にあったのがどの「娘と私」だったのか、今となっては思い出せないが、その後も大人になって自分で「娘と私」シリーズの文庫などを買って読んだ記憶がある。
 私の中での「佐藤愛子」は「シングルマザーのはしり」のような存在だった。

 まさに「丁々発止」という言葉がピッタリな、母と娘のやり取り。
 毒舌で、怒りっぽい母の愛子と、その母に負けじと言い返す娘の口ごたえ、そのやりとりがイキイキと綴られたエッセイは、痛快だった。

 数年後、佐藤愛子さんが「徹子の部屋」でお孫さんのお話をされているのを見て、
「ああ、娘さんご結婚されて、お孫さんも生まれたんだ」
 と思った。

 爆笑したのは、その時「徹子の部屋」で紹介されていた、佐藤愛子さんとお孫さんの「年賀状」。
「毎年テーマを決めて、コスプレをして写真を撮る」
 と紹介された年賀状のある年のテーマが「はまはげ」だったか「鬼」だったか・・・・
 鬼のお面を付けた佐藤愛子さん(と思われる人)が、逃げまどう孫を追いかけているという構成の写真だった。

 ありがちな家族写真ではなく、そんな作り込んだ年賀状を作っているということも面白かったし、その時点ですでに、佐藤愛子さんは70代にはなっておられたと思うが、そんな茶目っ気があるというにも笑った。


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NHKには違和感

 「ニュース ウォッチ 9」では、「九十歳。何がめでたい」が発行部数65万部を超える大ベストセラーだと紹介され、読んで年配者の気持ちがわかったというような意見が放送されていた。

 本当にそうだろうか?
 この本はそんな本だろうか?

 90歳の母の介護のために、実家に戻ったという女性が「この本を読んで、母親の孤独をかいま見た」と紹介されたり、小学生の女の子がこの本を読んだことによって、おばあちゃんに優しくなったなどと紹介されていた。

 いったいこのNHKの特集を企画した方は、どれだけ佐藤愛子を知っているのだろうかと思う。
 佐藤愛子を知らなくても、「九十歳。何がめでたい」をちゃんとお読みになったのかしら?
 この「ニュース ウォッチ 9」の切り口というか、紹介の仕方には、私はかなりの違和感があった。

 この本は、そういう90歳の孤独や、老いによる苦悩をあつかったものではない。

 むしろ、逆に、世間が90代に持っているイメージをぶち壊すような、破壊力のあるメッセージが満載の本だ。

 私が書店で手にとって、すぐに買うことを決めたのは、佐藤愛子の毒舌が、90歳を過ぎてもまったく衰えていないことに興奮したからだ!

愛子節、健在

 タイトルからして、「何がめでたい」と毒舌である。

 私が一番笑ったのは、「田舎の近所付き合いや人間関係が憂鬱」という内容の、新聞紙上の人生相談を取り上げて、愛子さんが毒舌を吐きまくるくだり。
 普通、人は、歳をとったら丸くなる。
 佐藤愛子は丸くなるどころか、ますます舌鋒鋭く、毒舌が冴え渡っている。

 『どこかに愚痴を言える場があるといいんですよね』と新聞紙上の回答者が答えているのに対して愛子さんは『こういう場合は愚痴というより悪口を散々いえばいいのだ。いっていっていいまくって、疲れ果てるまでいい募るとガックリ来て(つまり登山の時のように)気が鎮(しずま)る。』と書いている。

 ただ「悪口を言え」でもかなり毒舌だとは思うが「いっていっていいまくって」というところが、佐藤愛子らしい。
 それを、しかも、90歳の女性が推奨しているかと思うと、「長生きの秘訣はそこだな」などと思う。

 私のような小心者は、悪口をいいかけても、口をつぐんで、あとでウジウジ一人で考えたり、自分を責めてみたりする。
 当然ストレスがたまるから、不健康だろう。

 だれもが佐藤愛子のような痛快な生き方に憧れるけど、簡単に真似できることではない。

 「九十歳。何がめでたい」とはそういう本だ。

「すごいわね、佐藤愛子。90歳になってまだ悪態ついている」
「こんなに言いたい放題できたら、そりゃ、90歳まで生きるわね」
「私にはできないわ」
「本当、そうよね・・・」
 と感心しながら、愛子老人の毒舌を拝聴する本である。

男の毒舌家はかわいそう


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 毒舌で鳴らした大橋巨泉も永六輔も、晩年は病魔に全身むしばまれ、決して幸福とは言えなかった。
 毒舌を吐いていても男性は、どこかで吐ききれていないというか、無理をして吐いているようなところがあって、そのしわ寄せが晩年に押し寄せるようである。

 永六輔さんも、60代前半くらいまでは、激高してテレビ番組の途中で帰ってしまうようなことが多々ある血気盛んなお方だっただけに、晩年のご病気になられてからのご様子は胸が傷んだ。

 ご病気と言えば、数日前に東京都の百条委員会に証人として出席した石原慎太郎にも驚いた。
 まさかあれは、芝居ではないだろう。
 おぼつかない足取りや、さすがに衰えた容姿や、謎の湿布など・・・・。
 「颯爽とした」という形容詞が誰よりも似合っていたかつての石原慎太郎と、同一人物とは思えない様子に、悲しくさえなった。

 男の毒舌家はだれも、70代も後半になると、身も心もボロボロといった感じで、消え入るように世を去っていく。

 それに引き換え、佐藤愛子の元気なこと。

 佐藤愛子の本を読んで、年寄りの気持ちを知ろうとか、90代の孤独を知ろうとか思ったら、大間違いだ。
 少なくとも、頭の中はとても90歳とは思えないほど元気で、回転が早く、老いとは縁遠い。そんな様子だ。

 耳が遠くなったとか、公衆トイレで警報機を誤って鳴らしてしまったとか、失敗談として書いてあるのは、ある意味世間に対する「私だって、人並みに老いぼれているんですよ」という言い訳にすら聞こえる。

 スマホがなんだかわからないと言いつつ、『スマホを1台持っていると電話にカメラに計算機とか時計の役目までこなすんだって?』と、その実スマホがなんだかよくわかっておられる。
 私の70代の義母は、いくら説明してもそこまでスマホを理解できていない。

 佐藤愛子って、改めてすごいなあ、というのが「九十歳。何がめでたい」ではないだろうか。
 これは、残念ながら佐藤愛子にしか書けない。

 「娘と私」シリーズが人気のため、佐藤愛子という人は、離婚して一人娘を育ててきた女性と思っている人も多いが、実は一人娘の他にも生き別れた子どもが二人いる(詳しくは佐藤愛子 (作家)Wikipediaへ)。
 その他もろもろ、とにかく壮絶な人生である。

 普通、体はもっても、精神的にキツくて、長生きはできなさそうな波乱万丈の90年を生き抜いてきた人だけに、これだけの毒舌を吐いても、重みがあって、「切り抜けてきた人」の実感がこもっている。

 私は90歳になって、これだけ頭の中がしっかりしているかしら?これだけ、世間の最新テクノロジーを理解できるかしら?これだけ怒りの沸点を高く保てるかしら?と思いながら読んでいる。
 けっして、「九十歳。何がめでたい」が、老人の心の中の孤独や苦痛をうったえた本でないことだけは、40年佐藤愛子を読んできた私が力説したい。

 NHKさん、どう思いますか?

 「虎の威を借る狐」ならぬ「佐藤愛子の威を借る私」であることはわかっている(笑)。佐藤愛子の本を読むと、どうしても感化されて強気になる。
 いい意味でも悪い意味でも、毒気に当てられてテンションが上がることは間違いない。

 佐藤愛子の本はこちら Amazon 佐藤愛子の本の一覧

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